フェリチン

組織中の鉄分と結びつく蛋白質の仲間であるため、鉄欠乏性貧血では少なくなる傾向があります。鉄分は、人間の体の各細胞へ酸素を供給するために必要な成分ですが、昔から再生不良性貧血や白血病があるとフェリチンの増加傾向が認識されていました。近年、これら以外にも、多くの癌でこの物質の増加傾向が確認されているため、ふるいわけをするためのスクリーニング検査として、別の血液検査と併用して行われています。陽性は、骨髄腫や白血病といった造血系の腫瘍で示されることが多くなっていますが、他の大腸や肝臓、膵臓、胆道といった臓器に見られる癌でも上昇することから、どの箇所に発生したのかを判定することはできません。当該検査は一般に、ふるいわけのほか、病状の確認や経過観察するために採用されています。

数値は健康であっても癌が発生していても、女性は男性の倍以上となります。これは月経に起因する持続した鉄消失に由来するもので、加齢に伴ってこの差はなくなっていきます。特に閉経後の女性の場合、この値は男性に近づきます。

異常値が出た場合、高値で貧血や白血病、膠原病、膵炎、肝炎の他、大腸癌や乳癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌などが疑われます。従って、当該数値が上昇してもどの部分が異常であるのかは分かりません。このため、高値の場合、癌が発生していることを視野に入れて検査が行われることになります。原因疾患を特定するため、血液検査や別の腫瘍マーカーの検査が併用され、加えてX線や超音波などを用いて詳細に調べることになります。