血清鉄

トランスフェリンは蛋白質の一つですが、血中に含有される鉄は全部この物質と結びついています。人間の体の中に存在する鉄はおよそ四グラム程度であり、ヘモグロビンと結びついている鉄はこの内、約七割程度です。ヘモグロビンは赤血球中に存在していますが、これと結びついていない残りの鉄は、ヘモジデリン及びフェリチンといった貯蔵鉄として臓器の組織に含まれています。また、この臓器組織から出てくる鉄が微量に血中へ流入し、造血のために骨髄に移動して使われています。食べ物が体内へ入ると、十二指腸で鉄が取り込まれます。その際、偏った食事や吸収率低下を招いていると、鉄分が血中において不十分となります。すると貧血を引き起こすわけですが、これは血中の鉄分が不足することでヘモグロビン合成に支障をきたすためです。

血清鉄検査(けっせいてつけんさ)は鉄欠乏性貧血が予測される場合に実施される検査であり、貧血のほとんどはこの鉄欠乏性貧血となります。一方、総鉄結合能は、トランスフェリンの増加と減少に影響するもので、貧血などの診断に使われています。こちらはトランスフェリン結合鉄とトランスフェリン非結合鉄を合わせたものです。また、UIBCと略される不飽和鉄結合能はトランスフェリン産生量、体外消失、血清鉄量に影響される検査です。

総鉄結合能(TIBC)は女性の月経前で上昇を示します。血清鉄は、一日を通して値が変動を呈します。また、高齢者や発育期の子供などは低目となります。更に妊娠を迎えた女性では上昇する傾向にあり、女性と男性とでは男性の方が高値を示します。

異常値が示された場合、血清鉄が少なくなっていると、そのほとんどが鉄欠乏性貧血となります。このほか、悪性腫瘍や真性赤血球増多症、腎不全、慢性感染症なども疑われます。鉄結合能が低下した場合、ネフローゼ症候群や再生不良性貧血、慢性感染症、悪性腫瘍などが推測されます。高値を示した場合、鉄欠乏性貧血や真性赤血球増多症が考えられます。