血中自己抗体

もともと体の中に有している物質へは抗体を生成しないのが普通です。この抗体は体内の防御反応によって発生するもので、化学物質や細菌、ウイルスなどの抗原との反応の結果です。抗原とはもともと体内になかった異物のことを言いますが、時に体の構成成分を異物として認識することがあります。そのため、抗体が発生しますが、いわゆる自己抗体と言われているものです。自己免疫疾患はこの血中自己抗体(けっちゅうじここうたい)によって体を構成している組織や細胞へ障害を招く病気です。よく知られているものでは慢性間接リウマチや全身性エリテマトーデスなどがあります。血液中には抗ミトコンドリア抗体や抗DNA抗体、抗核抗体といった様々な自己抗体が発生します。

抗ミトコンドリア抗体の検査は原発性胆汁性肝硬変を診断する際に有用で、ほとんどが陽性を呈します。M1~M6に対応抗原から分類され、中でも特異的に抗M2抗体が発見されます。抗体はミトコンドリアに対するもので、このミトコンドリアは細胞内に存在する小器官です。その他、膠原病をはじめ、ウイルス性慢性肝炎障害、薬剤性肝障害などでも少ないケースで陽性を示します。

抗体の内、細胞核を攻撃するものを抗核抗体といいます。抗DNA抗体はその仲間となります。これらは全身性エリテマトーデスなどが推測される場合に実施される検査です。これは血中で高値を示すためで、膠原病や全身性エリテマトーデスだけでなく、自己免疫性肝疾患では非常に上昇する傾向にあります。他にも慢性関節リウマチや強皮症などで高い数値を現します。特に抗DNA抗体は全身性エリテマトーデスを診断する際に有用ですが、これは症状の出現に先行して数値が高値を示すためです。この病気の症状は関節痛をはじめ発熱や紅斑といったものですが、抗DNA抗体を調べることで、全身性エリテマトーデスの診断の手がかりを得られます。