甲状腺ホルモン

種類としてはトリヨードサイロニンと呼ばれるT3、サイロキシンと言われるT4があります。前者は三個のヨードを一分子内に持つものであり、後者は四つ有しています。これらの甲状腺ホルモンは血中に溶解しており、酸素の消費やエネルギー代謝、蛋白質合成などに関わっています。ただ、T3とT4は血中において蛋白質と結びついていることからホルモンとして働きません。一方、蛋白質と結びついていないものをそれぞれ遊離T3、遊離T4と言います。実際にホルモンとして働いているのはこれらの物質であることから、近年ではこちらも測定されます。甲状軟骨と呼ばれる喉仏の外側に位置する甲状腺からは、カルシトニンの他、上記甲状腺ホルモンを放出しています。甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、脳下垂体から分泌されており、この物質によって甲状腺ホルモンは促されます。尚、カルシトニンはカルシウムの血中濃度を下げる働きを持つホルモンで、甲状腺の傍濾胞細胞(ぼうろほうさいぼう)から放出されています。年齢を重ねるごとに減少を示します。

異常値が出た場合、甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症が疑われます。前者は手足の振るえや発汗、脱力感、体重減少などの症状を訴え、悪化すると心不全を引き起こすこともあります。また、症状に眼球突出が見られると、バセドウ病とも言われます。この場合、TSHは減少するのに対して、T3、T4、遊離T3、遊離T4は上昇を示します。後者は、便秘や浮腫、低体温、無気力、動きが鈍化するといった症状を呈します。別名では粘液水腫とも言われており、このケースではTSHが上昇する一方でT3、T4、遊離T3、遊離T4は下降傾向を呈します。その他、甲状腺の腫瘍や亜急性甲状腺炎なども考えられます。

異常と判定された場合、甲状腺ホルモン薬や抗甲状腺薬が用いられます。前者は機能低下症で使われ、後者は機能亢進症で適応となります。また、ケースによっては手術を行ったり、放射性ヨードを用いた治療法が実施されることもあります。