消化管ホルモン

血管作動性腸管ペプチドやガストリンなどおよそ三十種類以上の消化管ホルモンが存在しており、これらは摂取した食物の影響によって内分泌細胞から分泌されています。複雑な働きを持つ胃腸や膵臓、肝臓、胆道といった臓器をコントロールしており、消化吸収や代謝を補助しています。G細胞は十二指腸の粘膜に存在していますが、ガストリンはこの組織から分泌されます。このホルモンは、胃酸分泌を促進させる働きがあり、胃粘膜内に存在する壁細胞に作用して分泌が促されます。また胃酸が増えると反対にG細胞へ胃酸が働きかけ、ガストリンの分泌を抑えます。こうして調整されることによって、バランスよく胃酸が分泌されるようになっています。一方VIPと略される血管作動性腸管ペプチドは、消化管に位置する輪状平滑筋を緩める作用を持っています。食道から腸管全域までの間の粘膜及び筋層にありますが、まず食道拡張から食物が胃へ通過すると、そこでこのホルモンの作用から胃の緊張が下がります。食物が腸管に移動すると、ここでも作用し、腸管を収縮させます。その際、腸管口の方が収縮し次いで出口側が弛緩します。尚、消化管ホルモンの検査は採血を空腹時に行いますが、基本的には一般的な血液検査と同じです。

異常値が出た場合、ゾリンジャーエリソン症候群、胃潰瘍、萎縮性胃炎、WDHA症候群、悪性貧血などが考えられます。ゾリンジャーエリソン症候群の診断にはガストリン検査が必要であり、この疾患はガストリンを分泌させる腫瘍が発生します。このため、ガストリンの異常分泌から過酸傾向を示し、難治性の胃潰瘍や十二指腸潰瘍を発生させます。WDHA症候群は過剰に血管作動性腸管ペプチドが分泌される疾患であり、これは褐色細胞腫及び膵臓腫瘍といったものが原因となって引き起こされます。胃の無酸症を招く疾患であり、水様の高度な下痢と共に血中カリウム値の減少が起こります。

異常値が出た場合、更に血管造影検査や内視鏡検査、X線CT検査などが併せて行われます。これによって分泌腫瘍の存在が明らかになった場合、ガストリンと血管作動性腸管ペプチド由来のいずれのケースもその異常分泌を生じている腫瘍を手術によって摘出します。