TPA/組織ポリペプチド抗原

体内に発生した腫瘍組織に認める蛋白質の一種で、原発箇所に関わり無く、大抵の癌で高値を示します。この蛋白質は健康な細胞には認められないため、腫瘍マーカーとして使われています。癌を診断する上での手がかりを見つけたり、疾患の進展の程度や術後の再燃の経過観察などに有用です。ただ、TPA(組織ポリペプチド抗原)のみで早期癌を見つけたりするのは困難であり、これは別の腫瘍マーカーと同じです。近年、別の腫瘍マーカーと併用される傾向にありますが、これは腫瘍を除く他の疾患においても上昇を示すためで、AFPやCEAといった別の腫瘍マーカーと共に行われています。

基準値はラジオイムノアッセイ法で110U/ml以下となりますが、若年層や女性では少し低値を示します。また、異常値は妊婦や多量の飲酒をする人にも認められます。高値を示す疾患では消化器系癌である大腸癌や膵臓癌、肝細胞癌、胃癌、そして膀胱癌や卵巣癌、肺癌などがあげられます。しかし、良性疾患である胃潰瘍や急性及び慢性肝炎においても上昇傾向が認められます。他にも、膵炎やインフルエンザ、糖尿病、腎不全、腎結石、胆石症、全身性エリテマトーデス、腎盂炎、肺炎、胆道感染症、結核、肝硬変などでも陽性を示します。このため、当該検査のみでは癌なのか別の疾患なのかを鑑別できません。尚、TPAの特徴として癌では緩やかに上昇する傾向に対して、その他の疾患では高値が一過性に示されても徐々に低くなっていく傾向にあります。

異常値が出た場合、上記の理由により、当該検査だけでは病気を特定することができないため、血液検査や別の腫瘍マーカーと併用して検査が行われます。そして、大腸疾患が疑われるなら、大腸内視鏡や注腸X線検査などが実施され、胃疾患なら胃内視鏡、胃透視X線検査などが実施されます。また、膵臓や肝臓、胆嚢疾患が予測されれば、超音波検査などが行われます。