多発性筋炎/皮膚筋炎

症状

多発性筋炎(たはつせいきんえん)では骨格筋に炎症が引き起こされ、それと共に皮膚筋炎(ひふきんえん)を出現させます。前者は初期段階で筋肉痛及び関節痛を呈します。いずれも腰や肩から発するケースが多いと言われており、起立の際や階段の登りの際に苦しさを感じます。徐々に脱力感を示すようになりますが、他にもレイノー現象や嚥下障害などに起因して発見されるケースもあります。重症になると障害が呼吸筋に達する場合もあります。皮膚筋炎では瞼などが紫色にはれ上がったり、四肢において境界の明確な紅斑を示します。発症年齢は幅広くなっていますが、男性より女性の方に多く見られます。悪化すると歩行困難や手をあげるのも難しくなり、延いては会話に対しても支障をきたすようになります。

原因

自己免疫の関与が指摘されており、多発筋炎においては細胞性免疫が示唆されています。一方皮膚筋炎では液性免疫に起因する虚血が指摘されています。本疾患では急性または亜急性に筋線維の崩壊が見られ、原因のハッキリ分からない炎症に由来します。本疾患が自己免疫疾患と考えられるのは、副腎皮質ステロイドといった免疫抑制薬に効果を示したり、別の自己免疫疾患を併せて発生させるケースなどがあるためです。また筋炎特異的自己抗体の存在や筋組織への炎症細胞浸潤などが見られることもその原因のひとつです。また多発筋炎では筋内膜の近くにCD8陽性T細胞が優位に浸潤箇所に見られ、皮膚筋炎では血管の周りや筋周膜周囲においてCD4陽性T細胞とB細胞が見られます。このため、筋細胞への自己免疫疾患が多発筋炎といわれており、血管炎の一種が皮膚筋炎とされています。

治療法

免疫抑制薬及び副腎皮質ホルモン薬の投与による治療方法がとられます。本症単独では生命予後も良好ですが、合併症として悪性腫瘍を発生させやすいとも言われています。その他、炎症が心筋に達すると生命の見通しも悪くなります。

補足

よく使われる薬

グルココルチコイドとして、プレドニン(プレドニゾロン)、ソル・メドロール。免疫抑制薬としてメソトレキセート、イムラン、プログラフカプセル、ネオーラルカプセル、エンドキサン(シクロホスファミド)。その他、ガンマグロブリン大量静脈注射療法として献血ヴェノグロブリン。本疾患での第一選択薬としてはプレドニゾロンが用いられ、経口で大量投与が行われます。しかし、進行や病状の程度によっては初期からステロイドパルス療法や免疫抑制薬の投与が選択されるケースもあります。まず、プレドニゾロンで改善が見られない場合、投与量を増やすかステロイドパルス療法が実施されます。これを三ヶ月継続しても筋力の改善を認めないケースではステロイド抵抗性と判断し、免疫抑制薬の使用が視野に入り、ステロイドと併用します。これらによって改善が見られないケースではIVIG製剤である献血ヴェノグロブリンIHを使います。