末梢性顔面神経麻痺/ベル麻痺

症状

末梢性顔面神経麻痺(まっしょうせいがんめんしんけいまひ)では通常、片側において完全な顔筋麻痺を生じます。眼を開けたり、顔面にしわを寄せるなどの動きが出来なくなる特徴があり、このために顔つきも歪んでしまいます。また食物やよだれが口から排出されてしまうこともありますが、これは麻痺した口部が落ちるために生じます。更に両側において本症を発症することあります。その他、症例は少ないものの帯状疱疹が耳部に発生したり、眩暈と共に強い耳鳴り、或いは大きな音が聞こえたり、涙が多く出たり出なくなったりすることもあります。

原因

従来、片面が強風にさらされたり、ウイルス感染などが原因として指摘されてきましたが、近年では一型単純ヘルペスウイルスの潜伏感染により、これが再活性化するために引き起こされるとされます。本症は単神経炎の一つであり、いわゆる顔面神経麻痺のことを指しています。原因不明とされますが、動脈硬化及び糖尿病に併発するケースも見られます。尚、末梢性顔面神経麻痺はベル麻痺(べるまひ)とも言われています。

治療法

各種ビタミンB群のほか、プロスタグランジン製剤の点滴、副腎皮質ホルモン薬の投与による治療方法が採用されます。また赤外線を用いた温熱療法や電気療法、マッサージ、針、角膜の保護といった治療法が有効になることもあります。更に神経ブロック療法などもあります。通常、早くからリハビリテーションを実施します。また保温を麻痺した患部に施し、安静を心掛けます。末梢性顔面神経麻痺は適切に治療すれば一ヶ月程度で治癒するに至ります。

補足

分類

ベル麻痺(Bell)は従来、一側性抹消顔面神経麻痺のことを意味していました。最近の研究では神経炎の主軸となる原因が、HSV-1(単純ヘルペスウイルス一型)の再活性化と考えられています。顔面神経麻痺の原因の大半はベル麻痺とされており、その内およそ二割程度がラム・ゼイ・ハント症候群(Ram say Hunt)となっています。後者の神経炎は水痘および帯状疱疹ウイルスが膝神経節に潜伏感染し、これが再活性化することで引き起こされるといわれます。こちらの予後は若干不良で、後遺症を招きやすくなっています。そのため早期に治療することが大切です。一方、ベル麻痺は予後良好とされます。

検査と診断

鑑別を要する病気では、ギランバレー症候群、ラムゼイ・ハント症候群、糖尿病抹消神経障害、ライム病、サルコイドーシスなどがあります。涙分泌、聴力、血液、耳小骨筋反射検査(じしょうこつきんはんしゃけんさ)などの他、顔面表情なども診断基準になります。

よく使われる薬

末梢性顔面神経麻痺の急性期ではプレドニン、バルトレックス、メチコバール。本疾患は抗ウイルス薬と副腎皮質ホルモン薬を組み合わせて使用するほうが、副腎皮質ホルモン単独利用より効果があるとされます。また、コンドロイチン点眼液やメガネなど角膜保護の目的で使われることもあります。更にマッサージなどリハビリテーションも行います。慢性期では寛解を示すまで継続してビタミン剤を使用し、同時にリハビリテーションも継続させます。美容的な問題や後遺症の有無などによっては外科的治療が実施されることもあります。