悪性貧血

症状

悪性貧血(あくせいひんけつ)が先行して生じ、後に四肢の感覚異常や深部感覚の低下といった神経症状を示します。また腱反射の亢進及び痙縮に起因し異常な反射が示され、これらは錐体路障害に由来します。一方、深部感覚の低下は後索障害に由来するものでロンベルク徴候が出現します。他にも抑鬱状態を引き起こしたり、知能低下、記憶障害などを示すこともあります。治療をせず放置した症例では視神経萎縮が示されることもあります。アキレス腱反射に関しては、本症が末梢神経障害に起因することから、どちらかと言えば低下する傾向にあります。末期に至ると直腸及び膀胱障害を示すようになります。

原因

ビタミンB12の欠乏が原因であり、亜急性連合性脊髄変性症を示す傾向にあります。胃壁における内因子欠損に起因して発症します。末梢に行く程、その障害の程度も強く出現し、側索や後索変性が亜急性連合性脊髄変性症の主軸となります。つまり、錐体路においては腰髄が強く異常をきたし、後索においては頸髄が強く異常を示すことになります。

治療法

ビタミンB12を筋肉注射する治療方法がとられます。経口投与より筋注の方が効果があるとされています。尚、多発性硬化症やスモン、HAM、変形性頸椎症などとの識別が必要です。病態は上記に記したとおりで、これらの状況が見られたケースでは悪性貧血を疑うことになります。

補足

検査と診断

過分葉好中球、尿中メチルマロン酸排泄増加、大球性貧血、黄疸、乳酸脱水素酵素などの所見。これらと共にビタミンB12および葉酸欠乏、骨髄への巨赤芽球の有無によって悪性貧血の確定診断。

よく使われる薬

メチコバール、フェロミアなど。通常ビタミンB12の経口投与はされず、これは胃の切除や内因子欠乏が理由であるためです。このため、筋肉注射によって投与します。静脈注射もしくは点滴静脈注射では非効率的であり、つまりこういった方法では素早く尿として処理され、対外へ出ていってしまうからです。悪性貧血では内因子が見られないことから、ビタミンB12の取り込みは不能と考えられる傾向にあります。とはいえ、微量ではあるものの受動輸送による取り込みも可能という観点から、その吸収性に有効とする考えもあるようです。その場合、毎日の投与が望まれますが、これを筋肉注射にすると通常、三ヶ月に一回程度となります。極力、筋肉注射のほうが薦められており、有効性が指摘されています。投与開始から数時間で倦怠感などが消えます。また数日で網赤血球が増え、二週間程度でLDHの正常化が見られます。一ヶ月もすれば汎血球減少にも改善が認められます。ビタミンB12を投与しても改善がみられなくなると合併症として鉄欠乏性貧血が視野に入ります。この場合、総鉄結合能増加およびフェリチン減少を認めると鉄剤を使用します。葉酸欠乏由来の巨赤芽球性貧血はファリアミンを投与します。また葉酸欠乏の理由であるメトトレキサートや抗痙攣薬の使用といった原因を取り除きます。ただし、ビタミンB12欠乏に起因する神経症状へ葉酸を使用すると更に酷くなります。