脊髄梗塞

症状

脊髄梗塞(せきずいこうそく)。前脊髄動脈症候群の初期段階では四肢麻痺及び対麻痺などを示し、慢性期に移行すると対麻痺を生じないケースも見られます。後脊髄動脈症候群では血管障害によるものはあまり見られず、急激に発症し、強い疼痛を生じます。また、脊髄障害ではあまり見られない同側感覚障害及び一側性脱力を示します。これらの病態において通常脳脊髄液は適正範囲内とされます。発症は数時間から数日で、病変部に対して疼痛箇所の合致が見られる傾向にあります。背部痛も伴う場合が多くなっています。

原因

脳梗塞と同じ因子である動脈硬化、血管炎、感染、外傷、膠原病、大動脈乖離、或いは大動脈手術など。前脊髄動脈症候群では梗塞が原因になるとは限らないとされますが、通常急性の血管障害を生じます。障害個所は前脊髄動脈への流入血管であり、髄節性に由来する疼痛が初期症状となることが多いとされます。また膀胱容量が下がり痙性膀胱を示します。後脊髄動脈症候群では血管障害に起因するものはあまり見られません。男女差はなく、五十歳以上の人に多く見られるまれな病気です。また本疾患は脊髄組織の不可逆性壊死もしくは喪失であり、これは頸椎や胸腰椎の分岐に位置する根動脈の虚血を起因とします。虚血する箇所により、感覚や運動障害、障害高位といった多様な病状を示します。

治療法

脊髄梗塞では副腎皮質ステロイド薬や抗血小板薬の使用、抗凝固療法などが実施されるほか、全身血圧保持、肺塞栓および深部静脈血栓症などの予防に努めます。発症初期段階では脳血管障害と同様の薬物による治療方法が採用されることもあります。慢性期以降後では痙性対麻痺及び膀胱障害に対して最適とされるものが選ばれます。リハビリテーションに関しては初期から取り入れるべきとされています。脊髄梗塞は通常進行性ではないとされます。ただし、発症個所の拡大の程度によってその見通しも影響を受けます。本症において膀胱管理は重要であり、これは膀胱直腸障害が合併することに由来します。中でも痙性対麻痺を引き起こすケースでは初めから痙性膀胱を生じ蓄尿量が減少します。このため自己間欠導尿が重要であり、バルーンカテーテルの利用はなるべく避けるべきとされます。この病気は確立された治療法が現時点でありません。脳梗塞に則った保存的療法が一般的です。二割程度の患者が入院中になくなることが多く、予後は不良です。療養施設への移動やリハビリテーションの実施などは、急性期を経過してから実施することも多いようです。

補足

検査と診断

多発性硬化症、血管奇形、大動脈乖離、ギランバレー症候群、心筋梗塞、特発性横断性脊髄炎、また膿瘍や血腫、椎間板ヘルニア、腫瘍といった手術適応の病気との鑑別を要します。脊髄梗塞の検査では血管造影の実施もありますが、基本的にMRIが役立ちます。大動脈乖離若しくは同様高位において椎体梗塞を見る例では、脊髄梗塞が視野に入ります。多発性硬化症は脳にプラークが存在するケースにおいてその可能性を考慮します。T2延長がMRIにおいて非特異的状態を示すことから、別の所見を勘案しながら評価します。