アルツハイマー病

症状

老齢者の内、次第に記憶を喪失していく症状を示す場合はアルツハイマー病(あるつはいまーびょう)の可能性があります。普通は自分でも気づかない内に進行するケースが多く、本症の兆しとしては直近の出来事に対する物忘れが代表的です。また感情の減少、不安、うつ状態、恐怖といったものが示され、人格の変化が見られる場合もあります。初期段階では思考力及び判断力の低下が示され、物事を抽象的に捕らえることができなくなってきます。進行すると過去の記憶も次第に喪失していきます。反社会的な行動が目立つようになり、場所や時間なども認識できなくなります。更に悪化すると会話もできなくなり、食物も摂取できず、失禁するに至ります。最終的には全ての記憶を喪失し、歩行不能になると半年以内に死に至るケースがほとんどとなります。

原因

遺伝的要因が関与しているとも言われていますが、その原因は詳細に解明されていません。ただ同一親族に発症する場合では、幾つかの原因遺伝子が見つかっています。本疾患では脳組織に神経原線維の変性と老人斑が認められ、いずれも加齢に伴って誰でも出現します。ただし、アルツハイマー病患者にはこれらの異常が通常よりも多く示されます。老人班は壊死した神経細胞の塊であり、異常とされる不溶性蛋白質であるアミロイドを含有しています。本疾患は特有の組織変性を脳内に引き起こし、進行性の精神作用喪失と神経細胞の破壊を示します。

治療法

NSAIDsやエストロゲン、ビタミンEなどには症状の進行を遅らせる働きがあると言われていますが、いずれもその有効性が証明されているわけではありません。また、アセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質を増加させる薬では、リバスチグミン、ガランタミン、ドネペジル、タクリンといったものがあります。ただし、これらの薬物に症状の進行を阻害する働きはありません。一過性の改善が見られる程度に留まります。アルツハイマー病はその進行を遅らせることができても、根治させることは現在のところ出来ません。尚、本症は六十五歳未満に発病する狭義のアルツハイマー病と六十五歳以上で発病するアルツハイマー型老年痴呆に分類されています。ただし、両者は実質、同一の疾患となります。