症状
緩やかに進行する脳出血とは異なり、アテローム血栓性脳梗塞(あてろーむけっせんせいのうこうそく)では急激な悪化を繰り返します。また数時間から数日かけて進行するケースが多く、それも段階的に進んでいきます。発症時間は安静時や睡眠中などであり、朝方や昼間などに生じやすい傾向にあります。発症部位は様々であり、軽度の半身麻痺から重度の昏睡状態を引き起こすこともあります。
原因
大動脈から頚動脈、脳底部主幹動脈におけるアテローム硬化が原因となります。これは糖尿病をはじめ、脂質異常症や高血圧、加齢などによって生じます。また動脈原性脳塞栓症、血行力学性脳梗塞、血栓症に分けられます。動脈原性塞栓症では、プラークや血栓などによって生じ、これが脳血管の抹消へ移動して閉塞を招き脳梗塞を起こします。血行力学性脳梗塞では狭窄が閉塞に近い状態で血圧低下から、主幹動脈境界域の二つに脳梗塞を招きます。血栓症は狭い意味でのことを指しており、破綻したプラークの存在する箇所で起こった血栓が大きくなることで灌流域において脳梗塞を引き起こします。従来、脳梗塞といえば脳血栓症、脳塞栓症、血行力学的脳塞栓症に分類されてきましたが、近年ではアテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓症に分類される傾向があります。本症は動脈硬化に起因する脳血管障害の内、太いものの閉塞或いはその病変が見られる動脈原性脳塞栓症のことを指しています。またアテローム血栓は椎骨動脈、中大脳動脈、脳底動脈、内頸動脈において見られ、これらの広い範囲或いは末梢部分に血栓塞栓症を引き起こします。尚、ラクナ梗塞は脳における小動脈のリポヒアリノーシスといったものに起因する血栓が発症原因となります。また合併症として高血圧を示すことが多いとされています。
治療法
重度の狭窄が見られるケースでは内膜剥離手術が実施されます。また本症は脳浮腫を併発するため、脳圧降下薬であるグリセロールが用いられる場合が多くなっています。更にワーファリンやヘパリンといった抗凝血薬、及びt-PAやウロキナーゼといった血栓溶解薬なども使われます。高血圧症が見られれば過剰な血圧低下に気をつけなければなりませんが、これは脳梗塞の再発などを引き起こすリスクが高まるためです。慢性期にはチクロピジンやアスピリンといった抗血小板薬による治療方法が行われます。その他、リハビリテーションなどによる治療法も採用されます。内科的療法では発症から三時間以内で静脈注射によってrt-PA(血栓溶解薬)を用います。抗血栓療法だと急性期でオザグレルナトリウムやアルガトロバン水和物などが用いられ、慢性期ではアスピリン、硫酸クロピドグレル、シロスタゾール(主幹動脈における重度の狭窄)などが投与されます。外科的療法ではメッシュ状の金属製の筒を狭窄箇所に留置させる血管拡張による頚動脈ステント留置術や内頚動脈の狭窄部において厚くなった血管壁を除去する頚動脈内膜剥離術があります。また、中大脳動脈における血流を改善させる浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術が行われることもあります。これは狭窄が内頚動脈や中大脳動脈近位部に生じているケースでは中大動脈の血流が悪化するためで、頭皮の栄養に関わる浅側頭動脈を結合させることで血流改善を図るものです。
補足
検査と診断
アテローム血栓性脳梗塞では頭部CTとMRI検査を行います。CTに関しては梗塞箇所において低吸収域を呈し、MRI拡散強調画像で急性期において高信号を示します。MRI-FLAIR画像に関しては高信号輪郭を有する低信号および高信号のT2強調画像となります。頭部MRAおよびCTアンギオにおいては血管狭窄ならびに閉塞評価、脳血管撮影では血流の遅れや側副血行路の発達の程度を診ます。また頚動脈超音波検査に関してはプラークの状態・可動性、血管狭窄および閉塞を診ます。