僧帽弁狭窄症

症状

僧帽弁狭窄症(そうぼうべんきょうさくしょう)の初期段階では息切れといった呼吸困難などが見られます。症状が重くなると喀血を出現させますが、これは血圧上昇に起因するもので、肺毛細血管及び気管支静脈の破裂によって引き起こされます。また肺うっ血に起因する咳や心拍出量低下に起因する末梢性チアノーゼ、下肢冷感を生じることもあります。更に全身性閉塞症を引き起こした例では、脳動脈閉塞に起因する痙攣や片麻痺、腎動脈塞栓に由来する腹痛など多くの症状を示すことになります。

原因

弁開口部の狭窄によって血流が悪化し、左心房の血液量増大と血圧上昇に伴って肥大する病態であり、多くはリウマチ熱に起因する後遺症から発病するとされます。リウマチ熱は抗生物質が多く利用されている区域ではあまり見られない疾患であるため、患者は抗生物質を利用した経緯がないと言われています。反対に抗生物質が利用されていない区域におけるリウマチ熱は、普通に見られる疾患となります。

治療法

リウマチ熱を防ぐことで予防が可能となり、連鎖球菌性咽頭炎及び猩紅熱(しょうこうねつ)を抗生物質によって治療します。またジゴキシン及び利尿薬でも治療が行われます。軽い症状には特に治療を行いませんが、感染性心内膜炎を惹起する可能性やリウマチ熱を再発すると考えられるケースではペニシリンなどの抗生物質の投与が実施されます。利尿薬は、肺における血圧を下げる働きがあり、これは利尿薬を用いることによって血液循環量が減少するために使われます。ジゴキシンは心拍数を減少させ、狭窄した弁の口において血液の流れを遅くする働きがあり、心房細動の症状に役立つとされています。運動は、呼吸困難や疲労感を感じられない程度に許容されますが、これらの症状が見られる場合では、上記の利尿薬やジギタリスを用います。また、ジピリダモール、アスピリン、チクロピジンといった抗血小板薬やワーファリンなどの抗凝固薬は血栓塞栓症を防ぐために利用されます。こういった薬物療法で改善が見られないケースでは外科的治療によって弁置換及びその修復が行われます。バルーンつきカテーテルを静脈より挿入し、僧房弁中においてバールーンを膨らませ、狭窄を広げる治療を施します。弁置換では人工弁を用いて、損傷の酷いケースにおいて弁置換します。