症状
悪性腎硬化症(あくせいじんこうかしょう)では頭痛、眠気、視力障害、錯乱、精神不安定、吐き気及び嘔吐といった症状が見られ、いずれも脳細胞の浮腫に起因するものとなっています。更に浮腫が進行して脳内出血を引き起こすと昏睡状態に陥ったり、癲癇発作(てんかんほっさ)を引き起こしたりするケースもあります。腎臓が障害されることによって次第に倦怠感及び脱力感といった症状を訴えるようになり、尿中には血球及びタンパク質が見られるようになります。頻繁に貧血を惹起することもありますが、これは体内での血球生産量の減少と共に血球破壊によるものです。
原因
主な原因は高血圧となっていて、その調整不足に起因するものとなっています。他には腎血管性高血圧症、糸球体腎炎、慢性腎不全に由来するものもあります。ごく僅かにクッシング症候群、褐色細胞腫、原発性アルドステロン症などが原因となるケースもあります。腎臓に存在する血管の内、特に細動脈など細い血管に炎症性変化が現れ、これが原因となって糸球体への血液が不十分となり、血圧が異常に上昇し、延いては腎機能低下から急性腎不全を引き起こします。
治療法
血圧を低下させることが非常に重要で、ケースによっては透析が必要になってくることもあります。近年、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)及びアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE)などの薬剤の利用が一般化され、比較的容易に血圧を下げることができます。そのため予後は極端に改善したとされます。通常、利尿薬であるフロセミドやβ遮断薬、カルシウム拮抗薬が使われており、これらによって改善が見られないケースにおいて上記の阻害薬及びAⅡ受容体拮抗薬を用います。悪性腎硬化症をほったらかしにすると凡そ半年程度で死に至ると言われています。一年も経過すれば更に死亡率は上昇していきます。大半は腎不全を起因にする死亡例が多く、次いで心不全、脳卒中、心臓発作となっています。しかし、腎不全の治療をきちんと行い、薬と食事療法を併用したケースでは死亡する確率もかなり低いものとなります。軽度の腎不全であれば通常回復の見込みが高いとされます。尚、進行性腎不全のケースでは透析によってそれ以上悪化させないための治療法が主軸となりますが、場合によっては透析を必要としない程度にまで回復することもあります。