無トランスフェリン血症

症状

遺伝性と後天性のものがあり、前者では糖尿病や心不全、内分泌障害、肝硬変、そして感染に対する耐性の低下などを招きます。これは鉄剤不応性の低色素性貧血を出現させるだけでなく、合併症として重度の鉄過剰症を引き起こすためです。後者では低トランスフェリンを基礎とする症状に乏しいと言われています。

原因

トランスフェリンは血清蛋白質であり、鉄を腸管や末梢組織から骨髄赤芽球細胞へ運ぶ役割を担います。この血清蛋白質が過剰に欠乏をきたすと、鉄が赤芽球に運ばれないことになります。そのため、ヘモグロビン合成が阻害され、鉄欠乏性貧血を招きます。しかし鉄を吸収する消化管の作用は高まっており、これが心臓や肝臓、脾臓、といった各臓器に鉄沈着を引き起こし、結果として鉄過剰症が出現します。無トランスフェリン血症は遺伝性のものと後天性のものがあり、前者は鉄過剰症と低色素性貧血を特徴とし、後者は血症トランスフェリン低値を示す疾患であり、肝硬変やネフローゼ症候群に起因するものです。また遺伝性のものは乳幼児に発症が見られ、出生直後ではないとする報告例があります。尚、後天性のものは正常なトランスフェリンも有するため、造血に使われる最小限のトランスフェリンがあることに由来し遺伝性無トランスフェリン血症のような症状は示しません。

治療法

後天性に起因する本疾患では原因となる病気の治療が実施されます。遺伝性由来のものに対してはトランスフェリンの補充療法が行われます。また鉄キレート薬は鉄過剰症に適用され、皮下注射及び瀉血にて実施されます。ただし、瀉血は重度の貧血が見られる場合、適用されません。