エルシニア感染症

症状

ペストで重症化したケースでは熱も高くなり意識障害を随伴させる急性細菌性感染症を招き、致命的となります。多くは腺ペストであり、数日から一週間程度の潜伏期を経て化膿性病変を呈します。発症は、熱の上昇に悪寒戦慄が随伴し、痛みを伴いリンパ節は腫脹を示して自潰します。全身のリンパ節や肝臓、脾臓などにおいて血行性に菌が伝播し、肺炎や敗血症、髄膜炎を生じます。また合わせて播種性血管内凝固を発症することも多く、大抵は一週間程度で死に至るとされます。肺ペストは、熱の上昇と共に頭痛や嘔吐を生じ、突如として呼吸困難から重度の肺炎像を呈し数日で死に至ります。敗血症ペストでは出血斑が皮膚上に出現し、これが全身性に黒色に変化し、死に至ります。仮性結核菌は発熱性の発疹を見る感染症であり、小児における腹部症状を随伴させます。Y.enterocoliticaでは胃腸炎が生じ、通常軽いものとなります。成人及び年長児童においては菌血症、結節性紅斑、回盲部病変、腸間膜リンパ節炎を呈します。

原因

ペスト菌、仮性結核菌、そしてY.enterocoliticaが人間に病原性を示します。エルシニア属はグラム陰性桿菌であり、大腸菌と同様に腸内細菌科に分類されます。エルシニア感染症は、人畜共通感染症であり、動物を介して感染し、低温域においても増え、増殖温度の幅は広くなっています。ペストは血を吸い込んだノミにおいて増加し、これに咬まれた場合或はペスト患者の喀痰に起因して発症します。特に流行している地域の鼠に常在しています。一方、仮性結核菌とY.enterocoliticaは、自然環境下において広く分布しています。例えば、乳製品や井戸水、牛乳、食肉など汚染された飲食物、サルや犬といった動物の腸管、ペットなどが該当し、これらから経口感染します。冷蔵庫内でもこれらの菌は生存するため、食品を介して二次性に感染症を引き起こす可能性があります。また単核細胞浸潤を限局性に生じ、肉芽形成を呈します。リンパ節に及び、腸間膜リンパ節炎を招きます。

治療法

ペストでは早くからストレプトマイシンが投与されます。またクロラムフェニコールやテトラサイクリンがケースによっては適用されます。腺ペストは放置すると凡そ半分程度が敗血症由来のショックから死に至ります。一方肺ペストを放置すると、ほとんどが死に至ります。仮性結核菌ではアンピシリン及びアミノ配糖体が肺血症を随伴させているケースにおいて適用されます。通常、抗菌薬を用いるまでもないとされ、見通しは良好です。Y.enterocoliticaでは重症化したケースにおいて抗菌薬が用いられます。基本的には対症療法が中心となります。抗菌薬を用いる場合、ニューキノロン系やテトラサイクリン、アミノ配糖体が適用されますが、これはβラクタマーゼ産生菌であるためです。