グリコヘモグロビン/HbA1c

赤血球内に存在する血色素は酸素を体内へ送る働きを持っています。この血色素がヘモグロビンと呼ばれているもので、これと血中のブドウ糖が結合したものをグリコヘモグロビンと言います。この物質は幾つかに分類されますが、その多くがHbA1cと呼ばれている物質です。この成分は糖化ヘモグロビンとも呼ばれており、血糖値が上昇するほどこの物質は発生しやすくなります。ヘモグロビンの種類ではHbA1とHbA2、そしてHbFが知られています。HbA1cはこのうちHbA1の一部にブドウ糖であるグルコースが結合したものを指しています。これをグリコヘモグロビンと言いますが、この物質は一旦作られると赤血球が破壊されるまで残存します。赤血球が壊されるのにおよそ四ヶ月ほどかかるため、全てのヘモグロビンの何割がHbA1cであるかその比率を確認すれば、二ヶ月ほど遡っての平均的な血糖値を割り出すことが可能です。この検査の優れた点は、食事やストレスなどに影響を受けないところで、より正確な測定ができます。

基準値はHPLC法で4.3から5.8パーセントです。測定の仕方が施設によって異なることもあるため、少しのずれはあると考えられます。しかし、この値が6パーセントを超えると、一般には糖尿病の可能性が強く疑われます。ただ、診断の確定は当該検査だけで行われることはなく、別の検査と併せて総合的に判定されます。これは糖尿病以外の疾患でも高血糖を示すケースがあるためで、血液内の尿素窒素値が上昇する腎不全などではHbA1cの値も高くなります。また少ないケースで異常ヘモグロビンを認めることもあり、この場合、腎不全や糖尿病を発症しているわけではありません。その他、疾患ではないのに高値を示すことがあり、こちらはHbFの上昇から、グリコヘモグロビンが数値上見せ掛けで高くなっていることもあります。一方、赤血球が短命になってしまうケースでは高血糖を示していてもHbA1cは低値を示す場合があります。これは糖尿病以外の疾患が原因となっており、溶血性貧血や肝硬変、消化管に発生した癌などがこれに該当します。また膵島腺腫(すいとうせんしゅ)とも呼ばれるインスリノーマはグリコヘモグロビンが低下する疾患であるため、HbA1cも低くなります。

異常値が出た場合、一定期間あけて再検査したり、二次検査などが行われます。また、糖尿病を治療している人であれば、血糖コントロールの見直しが必要です。他の病気が原因であれば、それを二次検査などで追求します。