症状
重症の低ナトリウム血症では嗜眠を示し、また脳浮腫から痙攣や意識障害など神経症状を呈することもあります。ただし、緩やかに発症する軽い低ナトリウム血症では、特にこれといった症状を示しません。これは低ナトリウム血症の重症度や悪化スピードによって違うためです。その他、低ナトリウム血症が確認されることで、ADH産生腫瘍が発見されることもあります。
原因
過剰な抗利尿ホルモンが分泌されることによって極端な低ナトリウム血症及び、尿中へのナトリウム排泄が増量する病態を異所性ADH産生腫瘍と言います。これは肺癌などに生じたADH産生腫瘍に起因するもので、中でも燕麦細胞型小細胞癌によるものが非常に多く見られます。また十二指腸癌や膵癌、胆嚢癌、前立腺癌、胸腺腫瘍などでも少ないケースで見られます。低ナトリウム血症の出現は水分の補給量が少なければ示されないこともあるため、肺燕麦細胞癌に起因するものでは高頻度に達するものと推測されています。更に抗利尿ホルモンの生成は必ずしも腫瘍に起因するものではなく、例えばシクロホスファミドやビンクリスチンといった肺癌治療に適用される薬に由来するSIADH(ADH不適切分泌症候群)も考えられます。また腫瘍組織が肥大し、これによって圧迫を大静脈にきたし、左心房容積受容体を間において抗利尿ホルモンの放出を促すことによってSIADHが招かれることもあります。その他、迷走神経が腫瘍によって影響を受け、ADHの分泌抑制を解放してしまうケースもあります。
治療法
原則として元となる病気の治療が主軸となります。デメクロサイクリンは対症療法でSIADHに適用されるもので、治療を実施する前若しくは治療を行っている最中に用いられます。その際、水分の摂取制限も合わせて行われます。増悪した低ナトリウム血症に対してはフロセミドの投与と共に優張食塩水の投与が行われます。しかし急な低ナトリウム血症の改善には気をつける必要性があり、血清ナトリウム濃度を一気に上昇させ過ぎないことに留意します。これは橋中心髄鞘崩壊を招く恐れがあるためです。