症状
先天性と後天性に分類されますが、通常、掌蹠角化症(しょうせきかくかしょう)とは先天性のものを言います。また、常染色体優性遺伝のものと常染色体劣性遺伝のものとに分けられます。常染色体優性遺伝形式では、Vorner型、Unna-Thost型、Greither型Sybert型、線状型、点状型、断指趾型、先天性厚硬爪症、食道癌合併型などが知られています。
Vorner型は、
掌蹠のみに潮紅した角化を見せ、爪甲変化や多汗などをしばしば認めます。
特有の顆粒変性が特徴であるもののUnna-Thost型と似た臨床像を呈します。
遺伝性掌蹠角化症で一番多いとされます。
Unna-Thost型は、
手掌足底においてびまん性の角質肥厚が対称性に見られ、乳児期に生後数週間で認めます。
しばしば手足背に達する軽い潮紅が出現し、その度合いは辺縁で高度となります。
毛髪や爪は正常であるものの局所的に多汗症を同時に見ます。
過角化であって、不全角化を随伴させず、また顆粒変性は認めず顆粒層は肥厚します。
Greither型は、
角化局面を連続性若しくは非連続性に手足背或いは肘頭膝蓋に認めます。
掌蹠過角化は中程度です。
発症は小児期であり、進行は中年で止まります。
Sybert型は、
進行性の過角化が掌蹠から四肢にかけて乳幼児期に見られます。
荒く大きなケラトヒアリンと角層内脂質沈着を示し、指趾断裂を招く例もあります。
線状型は、
報告ではデスモグレイン1及びデスモプラキン遺伝子変異が指摘されています。
指趾腹において線状角化を呈するタイプであり、五歳から二十歳にかけて好発します。
点状型は、
点状角化性小丘疹が数多く見られ、脱落後に噴火口状の小さな陥没を残存させます。
ケラチン遺伝子との連鎖は賛同されない傾向にあり、しばしば爪甲異常を随伴させます。
十五歳から三十歳にかけて見られます。
断指趾型は、
酷くなると指趾において絞扼輪が見られ、また絞窄及び脱落を示します。
蜂の巣に似た角化性のデコボコを掌蹠に形成し、手足背及び肘頭膝蓋に星形角化性丘疹を不規則に出現させます。
遺伝子異常をロリクリンに認めると魚鱗癬を同時に出現させると考えられており、コネキシン26に認めると難聴を随伴させるとされます。
先天性厚硬爪症は、
一型と二型に分類されます。
一型は遺伝子K6a/K17のどちらかに異常があるとされます。
掌蹠角化、多汗、爪甲肥厚、四肢毛孔一致性角化性丘疹、口腔及び舌粘膜白色角化などを認めます。
二型では異常がK6b/K17遺伝子にあるとされます。
毛髪異常、毛包脂腺嚢腫、生後の表皮嚢腫などを認め、軽度の掌蹠角化を出現させます。
その一方で口腔白色角化を認めません。
食道癌合併型は、
癌抑制遺伝子との関わりが示唆されています。
常染色体劣性遺伝ではPapillon-Lefevre症候群、meleda病、Naxos病、Richner-Hanart症候群といったものがあります。
Papillon-Lefevre症候群は
遺伝子異常がカテプシンCにあることからカテプシンC酵素の活性低下やその欠落を見ます。
乳歯は五歳弱前後で抜け落ちますが、これは歯肉炎や歯周囲炎などが伴うからです。
また、そういうった理由から永久歯も取れやすくなっています。
発症は乳幼児からでメレダ病様皮疹を認めます。
皮疹は高度の潮紅を伴い、多汗と共に悪臭を放ちます。
白血球貪食機能が弱体化し、肌は感染しやすくなります。
しばしば脳硬膜石灰化を随伴させます。
meleda病は
最初小児期から出現し、近位側に進行します。
重度の角化に潮紅を随伴させ、その範囲は手掌足底から手足背に達します。
肘頭、膝蓋に角化局面が見られ、湿疹、多汗症を伴います。
亜型では常染色体優性遺伝形式を呈するタイプも見られますが、症状は軽く、その発症も遅滞するとされます。
meleda病はかつてはハンセン病と間違われる傾向にあり、これは脱落、指趾硬化、絞扼輪などを認めたためです。
Naxos病は
プラコグロビン遺伝子変異が認められ、当該遺伝子は心筋細胞及び細胞間接着に関わっています。
またNaxos病では心肥大、羊毛様毛、右室心筋症を併せて発症します。
Richner-Hanart症候群は
チロシンアミノトランスフェラーゼ遺伝子に変異を認めます。
特徴として、羞明、痛みのある掌蹠角化症、精神発達遅滞を出現させます。
チロシン血症を併せて発症しますが、これはチロシンアミノトランスフェラーゼ欠損によるものです。
原因
遺伝子であるカテプシンC、表皮細胞結合因子であるデスモグレイン・デスモプラキン、角化因子であるケラチン・ロリクリンといったものの異常が様々な掌蹠角化症を引き起こすと考えられています。
治療法
一日三回程度サリチル酸ワセリンを患部に塗布します。また内用のレチノイドも用いられます。更に鱗屑及び角質を取り除きます。その他、症状によっては植皮的外科的治療を実施する可能性もあります。