邪正盛衰・虚実挟雑証~八鋼弁証では実証と虚証の区別が重要ポイント~

邪正盛衰(じゃせいせいすい)は、邪気と正気が高まったり弱まったり何度も生じることを言います。また疾患初期で実証と判断しても虚証に移行することもあります。つまり、初期段階できちんと対処しなかったために慢性化し、ひいては正気が衰退して虚証に変わるというものです。一方、虚証から実証に変わることもあります。この場合、妥当な治療を受けたために正気が元通りになり、延いては激しく邪気と争うために実証に移行するというものです。出現する症状は急性で重篤ですが、邪気が正気によって抑制されるといずれ改善を示すこともあります。

しかし理論上ではこういった分類がなされても実際の状態では両者の区別が困難な場合もあります。これは疾患に色々なプロセスがあるためで、実証なのか虚証なのかハッキリ判別できないケースも多々有ります。ただ、これらを区別することは八鋼弁証(はっこうべんしょう)においては重要な点とされています。

実証と虚証が時同じくして見られる状況を虚実挟雑証(きょじつきょうざつしょう)と言います。虚である脾虚(ひきょ)に起因して津液が滞り、これによって実である湿を招いているようなケースがこれにあたります。この症例では吐き気や膨満感、つかえといった湿の症状と同時に食欲不振や倦怠感、下痢、無力感など、脾虚の症状を呈します。